相続とは?
相続を辞書で調べると、「法律で、人が死亡した場合に、その者と一定の親族関係にある者が財産上の権利・義務を承継すること。」とあります。
ある人(被相続人)の死亡により自動的に起こる、財産の移動・分配のことを相続といいます。
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ちなみに死亡した人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
「相続人」は、被相続人の財産だけでなく、法律上の地位を引き継ぐことになります。
例えば、被相続人が誰かにお金を貸していた場合、相続人が、被相続人に代わって、お金を貸している立場になります。
ただし、相続人が数人いる場合は、全額ではなく相続分に応じた金額を引き継ぐことになります。
相続というのは財産相続に限られ、戦前のような家長の地位を引継ぐわけではありません。
財産には、現金や土地、建物などの不動産のようにプラスの財産ばかりでなく、借金や保証人としての保証債務を負う義務などのマイナスの財産も含まれますので注意が必要です。
借金の相続も、相続人が数人いる場合は、全額ではなく相続分に応じた金額を引き継ぐことになります。
そのような「一切の権利義務」を相続するのです。
相続人になれる人
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
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- 第1順位
死亡した人の子供
その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
- 第2順位
死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
- 第3順位
死亡した人の兄弟姉妹
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
どれだけ親しい間柄であっても、法的に相続人でなければ一切の相続はありません。たとえば、内縁の妻、事実婚、連れ子、嫁、などであっても、法的な繋がりが無い人には相続権は無いのです。もし、内縁の妻等に財産を残したいときには、遺言書によって遺贈をするしかありません。
法定相続分
もし遺言を残さずにお亡くなりになった人がいた場合、その方の財産は法律に定められた割合で相続人で分配することになります。法律で定められた分配の割合のことを法定相続分といいます。
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|
配偶者 |
第一順位 |
第二順位 |
第三順位 |
配偶者と子 |
1/2 |
1/2 |
なし |
なし |
配偶者と父母 |
2/3 |
なし |
1/3 |
なし |
配偶者と兄弟姉妹 |
3/4 |
なし |
なし |
1/4 |
配偶者のみ |
全部 |
なし |
なし |
なし |
子のみ |
なし |
全部 |
なし |
なし |
父母のみ |
なし |
なし |
全部 |
なし |
兄弟姉妹のみ |
なし |
なし |
なし |
全部 |
子供が複数いるような場合は、人数に応じて均等に分配されます。
例えば妻と子2人が相続する場合、妻=1/2 子A=1/4 子B=1/4となります。
遺留分とは?
被相続人は遺言により自由に自分の財産を配分することができます(指定相続)。しかし、それにより、本来、財産を相続できるはずの相続人が著しく不利益を被ることがあるかもしれません。それゆえ、法律は相続人の保護のために、「遺留分」として最低限相続できる財産を保証しています。
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例えば、奥さんがいるのに愛人に全ての財産を譲ると遺言した場合、残された奥さんの生活は立ち行かなくことが想像できます。本来なら正当に受け取ることのできる財産が手に入らないのはおかしな話ですから、たとえ法定相続分は手に入れられなくても、遺留分として認められる範囲で財産を手に入れられるようになっています。
遺留分を請求する権利が与えられているのは、以下の人です。
・配偶者
・直系卑属
・直系尊属
(注)代襲相続による相続人にも、遺留分の権利があります。
(注)兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。
遺留分を請求できる割合は本来の法定相続分の何分の1、という形で定められています。
「遺留分を請求できる割合」
相続人 |
遺留分として取り戻せる割合 |
配偶者 |
法定相続分の1/2 |
子 |
法定相続分の1/2 |
両親 |
法定相続分の1/2
(配偶者がいない場合1/3) |
兄弟姉妹 |
遺留分の権利なし |
なお、遺留分を計算する際の相続財産は、 相続発生時の財産とは異なりますので、注意が必要です。相続開始前1年間に被相続人が贈与した財産も、 相続財産に含めて計算されます。さらに1年以上前の贈与であっても、
贈与当事者が遺留分権利者の利益を害することを知っていた場合にも、 その贈与財産は相続財産に含まれます。それらの財産から、 相続発生時の負債を差し引いたものを基準に遺留分を計算します。
相続の承認と放棄
相続は相続人にとってプラスとなる財産も、マイナスとなる財産も全てまとめて引き継ぐということになります。
自分に都合の良いものだけもらって、あとは知らないというわけにはいきません。
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しかし,無条件に負債を受け継がなければならないということになると,相続をするかどうかという相続人の意思を無視することになり,相続人の権利を侵害するおそれがあります。そのため、法律で相続人に相続をするかしないか選択権を与えています。これが相続の承認と放棄といわれるものです。
相続の承認
承認には単純承認と限定承認と呼ばれるものがあります。単純承認は債権も負債も何もかも全て引き継ぎますという意思表示です。限定承認はプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いかはっきりせず、相続放棄したほうが良いのか迷う場合に行います。単純承認は特に何も手続きをする必要がありません。限定承認は相続があったことを知った時から3か月以内に、相続人全員で家庭裁判所に限定承認の申し立てをする必要があります。限定承認は相続財産の調査が非常に面倒なのであまり使われていません。
相続の放棄
相続人が、相続財産にマイナスが多い場合など相続をしたくないと思ったら相続放棄の手続きをします。プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄することになります。放棄したいときは、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行います。相続放棄は、相続人が複数いる場合でも単独で申し立てることができます。
相続財産とは
相続財産とは、相続によって引き継がれることになる被相続人の権利義務のことです。相続財産は被相続人の一身に専属していた権利義務を除き、被相続人の有していた一切の権利義務が含まれます。
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一身に専属する権利とは、例えばある人が、画家に絵のモデルになってほしいと頼まれて承諾し、絵を描く前に亡くなった場合を考えてみましょう。画家は亡くなった方をモデルにしたかったのであって、誰がモデルになってもいいわけではありません。したがって、亡くなった方の相続人は絵のモデルになるという債務を承継する必要はないということです。これが一身に専属する権利(その人固有の地位や権利義務)といいます。
さて、財産にはどのようなものがあるのでしょう?
プラスの財産(積極財産)としては、不動産、預貯金、有価証券、自動車や家具等の動産、絵画や骨董品、ゴルフ会員権などがあります。マイナスの財産としては、借金、カードローン、買掛金、未払いの税金などがあります。
実は被相続人に財産がどれだけあるのかを調査するのは非常に骨の折れる作業です。相続人も全く知らないような土地を山奥に持っていたり、面識もない人に借金をしている場合もあります。それらすべてを漏らすことなく財産目録として作成していきます。
相続人の調査
相続財産が確定したら、誰が相続人なのかをはっきりと確定させることによって、はじめて相続財産の分割協議が行われることになります。そしてこの相続人の調査もケースによっては大変時間がかかる場合があります。
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相続人の調査は被相続人の戸籍謄本を出生から死亡まですべて入手しなければなりません。被相続人の戸籍謄本を入手するには
1.被相続人の最後の本籍地と筆頭者を調べ、最後の戸籍謄本(又は除籍謄本)を取得する
2.「戸籍事項」欄と「身分事項」欄を確認し、以前の戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍)を取得する
3.2の作業を繰り返し、被相続人の出生から脂肪に至るまでの身分関係を網羅する戸籍謄本類を取得する
4.上記1〜3により確定した各相続人の戸籍謄本を入手する
このような手続きを踏むことにより、相続人を漏れなく探し出すことができます。
なお、どのような相続手続きでも被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は必要になるため、複数枚取得しておいたほうがよいでしょう。また相続手続きをするときは、取得した戸籍謄本を複数の機関で使いまわすため、原本還付といって戸籍を返却してもらうとよいでしょう。